「ようやく現れたな、待っていたぞ。ウルトラガールソフィー」 「あなたに、この地球は渡さない」 (待っていた・・・。この自信、何かある・・・?) 一人のガッツ星人と荒野で対峙するソフィー。自信を含んだその言葉に何らかの策を 用意していることは間違いないが今の所それがなんなのかはわからない。 ソフィーは相手がどんな策を用意してるか、どれだけの力を持っているか検討もつかない状態で 不用意に攻め込むのは危険と判断し、しばらく間合いを保ったままにらみ合いが続く。 「良いのか、もうすぐ日が暮れるぞ・・・」 「・・・・・・!?」 ソフィーの考えを見透かしたガッツ星人の言葉。ソフィーの眉がぴくりと動く。 ソフィーは地球では太陽の光を吸収しエネルギーに変えている。それは非常に微々たるもので とても長時間の活動を可能にするものではないが、 それでも雲で太陽が隠れてしまって太陽の光が届かないときや 夜などは明らかにエネルギーの消耗が激しい。 (この宇宙人、私のことをかなり調べてきてる) どこまで調べ上げられているのか、底が知れない。 しかし、このままにらみ合っているわけにはいかない。 敵の挑発にのるつもりはないが、ガッツ星人の言う通り日が暮れてしまうとまずい。 意を決しソフィーがしかける。拳にエネルギーを溜め突き出す。青白いエネルギー弾が放たれる。 「ふん、お前の技は調べ尽くしたからな。そんなものは当たらんよ」 身体を捻るだけの最低限の動作で軽々とエネルギー弾をかわすガッツ星人。 言葉の通り、ソフィーの溜め動作を見ればどの光線がくるかわかっているのだ。 「くっ・・・!」(本当だとしたらかなり厄介ね) 予想以上に厳しい状況に歯がみするソフィー。だがそれなら取るべき手段は一つ。 「はぁっ!」 格闘戦に持ち込むべくかけ声とともに一気に間合いを詰めるソフィー。 近接戦闘における動きも調べ上げられている可能性も考えられたが、 光線技に比べてタメも少なくそうそう完璧に見切れるものではない。 問題はガッツ星人自身がどれほどの力を持っているか。 だが、どうやら判断は正しかったようだ。 「くっ・・・やはり映像で見るのと実際に対峙するのとでは全く違うな」 「やぁっ!!」 回し蹴り、後ろ回し蹴り、踵落としとソフィーの空中連続蹴りがガッツ星人の大きな頭を捉える。 「ゴフっ・・・!!」 さらに着地際に腹に蹴りを見舞うとガッツ星人は派手に吹っ飛んだ。地響きと砂煙をあげ倒れ込むガッツ星人。 (おかしい・・・あんな挑発をしていた割に手応えがなさすぎる・・・) そんな疑念もあったが未だに立ち上がれないガッツ星人を見て決断する。今なら避けられない。 ソフィーが腰を落としエネルギーを両腕に集める。エネルギーがほとばしり足元から緑色の光が立ち上る。 ソフィー最大の必殺光線、「ライトニング・レイ」。 大量のエネルギーを消費するがこれをまともに受けて耐えられる相手はそうそういない。文字通り必殺の一撃だ。 ドウッ!!と豪音とともにL時に組んだ両腕から放たれる緑色の光。いつもよりも広範囲に渡って凄まじい光線が輝く。 ライトニング・レイを放つ瞬間自分の技を調べ尽くしたという ガッツ星人の言葉が頭をよぎりいつもより多くのエネルギーを注ぎ放ったのだ。 「ぬおっ!?」 放たれた凄まじい光に驚愕するガッツ星人。そしてそのまま光に飲み込まれていく。 ソフィーの青く輝いていたカラータイマーが緑、黄色、橙色とみるみるその色を変えていく。 短時間に大量のエネルギーを消費し目眩に襲われるがぎっと歯を食いしばり最後の力を振り絞る。 必殺の一撃を放つ以上、必ずこれで決めなければならないのだ。だが・・・。 「馬鹿なやつめ、自らを窮地に追い込むような攻撃をするなど」 ソフィーの耳元で囁くガッツ星人の声。 「そんな・・・あうっ・・・」 驚愕し振り返ろうとするソフィーだったが、大量のエネルギーを急激に消費してしまったために 酷い頭痛と目眩に襲われ手で頭を抑え膝をついてしまう。 後ろから組み付いたガッツ星人はソフィーの胸に何かの装置を取り付ける。 その装置は黒い光を発するとみるみる形を変えソフィーの身体を這いずり回る。 「こ・・・これ・・・は・・・?」 ちょうど亀甲縛りのような形にソフィーの身体に黒い鎖が絡み付いていた。 「くくく、我々の勝ちのようだな」 装置を取り付けてきたガッツ星人の方に向き直ると更に背後から勝ち誇ったガッツ星人の声がする。 「な・・・!?」 そちらを見やるとガッツ星人がもう一人。傷や身体についた土汚れから察するに どうやら先ほど闘っていたのはこちらのガッツ星人だったのだろう。 ガッツ星人は二人いた!?ライトニング・レイを受けたのにどうして!? 混乱するソフィーだったがその状況に次第に心は絶望で埋め尽くされていった。 「はぁっ・・・はぁっ・・・どう・・・し・・・て・・・」 息も絶え絶えで言葉も出てこないソフィー。 そんな様子をみた先ほどまでソフィーと闘っていたガッツ星人が答える。 「瞬間移動と分身が我々の特技でね。お前の光線を受ける直前に分身を残して瞬間移動したのさ。 追いつめられたのもお前に必殺光線を撃たせるための演技さ。 まぁ、実際まともにやりあっては我々に勝ち目はなかったろうがな」 「く・・・うぅ・・・」 歯を食いしばり震える身体に力を込めなんとか立ち上がろうとするソフィー。 が、突然更なる脱力感に襲われうつ伏せに倒れてしまう。 「くくく、無理をしない方が良い。その鎖がお前のエネルギーを奪っているからな」 「しかし、こうも上手くいくとは思わなかったぞ。 我々の計算ではあの必殺光線を放った後も半分くらいはエネルギーが残っているはずだったからな」 ソフィーのカラータイマーはライトニング・レイを放ったときは橙色、 今は鎖にエネルギーを奪われ赤く光っている。 「うっ・・・うぅ・・・」 ソフィーは終始ガッツ星人の言葉に踊らされ冷静な判断ができていなかった。 だが、まだ僅かだがエネルギーは残っている。 急激なエネルギーの消耗により身体の状態は最悪だが 完全にエネルギーが失われる前にガッツ星人を倒すべく震える手を鎖にかける。 「きゃあ!!」 バチバチと二人のガッツ星人が放った光線に襲われるソフィー。 それほどの威力ではないがソフィーの動きを妨害するには十分な威力だった。 そして、今のソフィーにはその程度の威力の光線に耐える力も残ってはいなかった。 「あぁっ・・・あああぁぁ・・・」 悲鳴をあげ、もがくことしかできない。身をよじり、地面を転がるが 二人のガッツ星人に挟まれるように放たれた光線から逃れることができない。 二人のガッツ星人はソフィーが意識を失い、カラータイマーの輝きが消えるまで光線を撃ち続けた。