《さようなら》
「あれ?ここは?」
「よ!」
「天使ぃ?」
「そ、俺天使、お前が死んだから天国まで連れてく役目な」
「え?私、死んだの?」
「そ、まああまり深く考えるなよな」
「えぇぇぇぇ!25歳にやっとなったのに!」
「ボーイフレンドでもいたのか?」
「カレシ?いたよ」
「そっか、まあそんなとこだろうと思った」
「んー?・・・前に出会ったことある?」
「あっ・・・あるわけねえだろ!」
「ねえ、天国ってどんなトコロ?」
「何でもある所だが、俺はどうもねぇ・・・」
「なんで?」
「残して来た家族を待つのは辛いぜ・・・」
「そうだね・・・事故で急に死んじゃったし」
「大丈夫、俺がまた幸せな家族の仲に転生するよう頼んでやる!」
「本当?」
「ああ」
「あ・・・今の笑顔・・・やっぱりどこかで見たことあるよ!」
「人違いっつってんだろ?」
「わぁ、こんなに上まで来ちゃった、私の町があんなに小さい!」
「もうすぐその町ともお別れだ」
「一言、皆に言い残してから死にたかった」
「泣いてるのか?今泣いてもしょうがない、急だったんだ、しょうがないんだよ」
「・・・」
「しょうがねえんだよ・・・俺にもどうする事も出来ない」
「何で天使さんが泣いてるの?」
「もらい泣きだ・・・俺の趣味だ」
「こんなことがある度にもらい泣きしてるの?」
「まあ・・・たまたまだ」
「ぺったぺったぺったぺった♪」
「何だそれ?」
「解らない、いつも思い出そうとする度に解らなくなる、ぺったぺったぺった」
「そうか、足音じゃねえか?」
「ぺったぺった・・・あ、そうかも」
「忘れな、もう次の人生が待ってるんだ」
「なんかね、忘れたくない、とっても忘れたくないけど思い出せない」
「思い出したいか?」
「思い出したら次の人生を生きるのが辛くなっちゃうかもしれないから・・・どうしよう」
「お前なら大丈夫だ、うるま」
「え」
「お前なら大丈夫だって俺が言ってんだよ!うるま」
「懐かしい・・・なんだか天使さんにそう呼ばれるのが懐かしい・・・」
「俺も呼ぶのは懐かしいな・・・」
「え?天使さんの事なんて知らないよ?私」
「俺は知ってるけどな」
「ずるい!」
「泣いてるんじゃなかったのか」
「もう今は泣いてない!」
「そうか、天使がしちゃいけないんだけどな、こっち来い、後悔するなよ?」
「はい、来たよ」
「俺はもうここまでしか同伴できねぇ、だからやるぞ」
「何やるの?」
「俺が人差し指でお前のオデコをちょんと突くと、全てが思い出される」
「やっぱり怖いな」
「待ったなし、ほいっ!」
「あたっ・・・・」
「さあ、俺はここまでだ、新しい人生、がんばれよ」
「何だぁ、貧乏神かぁ、泣き虫なんだね・・・」
「るせぇ、お前も泣いてんじゃねえよ!」
「最後に会えたのが嬉しくて・・・ね」
「時間がねえ、うるま、お前はうるまじゃ無くなる」
「うん、思い出は欲しかったけど・・・もう終わりなんだね」
「ああ」
「お父さん、お母さん、はね、なな、愛子・・・そして白花(びゃっか)・・・」
「いつかまた会えるさ」
「ちょっとぉ!抱きしめないでよ」
「うるま・・・」
「泣かないでよぉ・・・私まで・・・泣きたく・・・」
「絶対いつか会おうな」
「勿論だよ!」
「お前の精神が消えてゆく・・・」
「絶対忘れないから・・・忘れないから・・・貧乏神。」
「ああ、俺もだ、うるま。またいつか・・・・・・」
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「天使さん・・・」
「おお、ななか、今、お姉ちゃんは天国にいったぞ!」
「天使ぃ・・・」
「はねか、まだ泣いてんのか、無事に天国にいったってよ!」
「お前ら、ほら、俺の左右にある羽にくるまれ」
「うん」
「うん」
「あったけえだろ?まあそれは置いといて、人間は絶対に死ぬように出来てるんだ」
「早すぎるよ・・・」
「そうだよ、はやすぎるよ!」
「そんなもんだ、そんなもんなんだよ、それより白花の面倒みてやれ」
「うん・・・」
「わかった・・・」
「子供をちゃんと残して死ねて、お前は幸せだったのかもしれないな、うるま」
遺影のうるまの顔が、微笑んだように見えた。